権利に関する登記の申請情報
権利に関する登記の申請情報
@目的
A原因日付
B登記権利者
C登記義務者
D添付書類
E課税価格
F登録免許税
@〜Bは不動産登記法59条による権利に関する登記の通則による登記事項。これに加え定めがある場合には登記事項になる項目(権利の消滅に関する定めなど)や、担保権に関する登記や用益権に関する登記をする場合にはそれぞれ特有の登記事項が追加されていく。
例:抵当権設定登記には債権額や債務者の氏名または名称及び住所が絶対的登記事項。(不動産登記法83条)
(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条 権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
一 登記の目的
二 申請の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
五 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同法第九百七条第三項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め
七 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請した者(以下「代位者」という。)があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
八 第二号に掲げるもののほか、権利の順位を明らかにするために必要な事項として法務省令で定めるもの
C登記義務者
権利に関する登記の申請は、原則登記権利者と登記義務者による共同申請なので登記義務者の情報を提供する。
共同申請の例外として以下の様なケースがある。
・判決による登記や、相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。(不動産登記法63条)
・登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。(不動産登記法64条)など。
不動産登記法
(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
D添付書類
添付書類として、登記原因証明情報や所有権登記名義人が登記義務者となる場合の印鑑証明書、代理権限証明情報、登記識別情報などを提供する。
(登記原因証明情報の提供)
第六十一条 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
(添付情報)
第七条 登記の申請をする場合には、次に掲げる情報をその申請情報と併せて登記所に提供しなければならない。
一 申請人が法人であるとき(法務省令で定める場合を除く。)は、次に掲げる情報
イ 会社法人等番号(商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)第七条(他の法令において準用する場合を含む。)に規定する会社法人等番号をいう。以下このイにおいて同じ。)を有する法人にあっては、当該法人の会社法人等番号
ロ イに規定する法人以外の法人にあっては、当該法人の代表者の資格を証する情報
二 代理人によって登記を申請するとき(法務省令で定める場合を除く。)は、当該代理人の権限を証する情報
三 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請するときは、代位原因を証する情報
四 法第三十条の規定により表示に関する登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区長又は総合区長とする。第十六条第二項及び第十七条第一項を除き、以下同じ。)、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
五 権利に関する登記を申請するときは、次に掲げる情報
イ 法第六十二条の規定により登記を申請するときは、相続その他の一般承継があったことを証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報(公務員が職務上作成した情報がない場合にあっては、これに代わるべき情報)
ロ 登記原因を証する情報。ただし、次の(1)又は(2)に掲げる場合にあっては当該(1)又は(2)に定めるものに限るものとし、別表の登記欄に掲げる登記を申請する場合(次の(1)又は(2)に掲げる場合を除く。)にあっては同表の添付情報欄に規定するところによる。
(1) 法第六十三条第一項に規定する確定判決による登記を申請するとき 執行力のある確定判決の判決書の正本(執行力のある確定判決と同一の効力を有するものの正本を含む。以下同じ。)
(2) 法第百八条に規定する仮登記を命ずる処分があり、法第百七条第一項の規定による仮登記を申請するとき 当該仮登記を命ずる処分の決定書の正本
ハ 登記原因について第三者の許可、同意又は承諾を要するときは、当該第三者が許可し、同意し、又は承諾したことを証する情報
六 前各号に掲げるもののほか、別表の登記欄に掲げる登記を申請するときは、同表の添付情報欄に掲げる情報
2 前項第一号及び第二号の規定は、不動産に関する国の機関の所管に属する権利について命令又は規則により指定された官庁又は公署の職員が登記の嘱託をする場合には、適用しない。
3 次に掲げる場合には、第一項第五号ロの規定にかかわらず、登記原因を証する情報を提供することを要しない。
一 所有権の保存の登記を申請する場合(敷地権付き区分建物について法第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記を申請する場合を除く。)
二 法第百十一条第一項の規定により民事保全法(平成元年法律第九十一号)第五十三条第一項の規定による処分禁止の登記(保全仮登記とともにしたものを除く。次号において同じ。)に後れる登記の抹消を申請する場合
三 法第百十一条第二項において準用する同条第一項の規定により処分禁止の登記に後れる登記の抹消を申請する場合
四 法第百十三条の規定により保全仮登記とともにした処分禁止の登記に後れる登記の抹消を申請する場合
(登記名義人が登記識別情報を提供しなければならない登記等)
第八条 法第二十二条の政令で定める登記は、次のとおりとする。ただし、確定判決による登記を除く。
一 所有権の登記がある土地の合筆の登記
二 所有権の登記がある建物の合体による登記等
三 所有権の登記がある建物の合併の登記
四 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記
五 所有権の移転の登記がない場合における所有権の登記の抹消
六 質権又は抵当権の順位の変更の登記
七 民法第三百九十八条の十四第一項ただし書(同法第三百六十一条において準用する場合を含む。)の定めの登記
八 信託法(平成十八年法律第百八号)第三条第三号に掲げる方法によってされた信託による権利の変更の登記
九 仮登記の登記名義人が単独で申請する仮登記の抹消
2 前項の登記のうち次の各号に掲げるものの申請については、当該各号に定める登記識別情報を提供すれば足りる。
一 所有権の登記がある土地の合筆の登記 当該合筆に係る土地のうちいずれか一筆の土地の所有権の登記名義人の登記識別情報
二 登記名義人が同一である所有権の登記がある建物の合体による登記等 当該合体に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報
三 所有権の登記がある建物の合併の登記 当該合併に係る建物のうちいずれか一個の建物の所有権の登記名義人の登記識別情報
(申請情報を記載した書面への記名押印等)
第十六条 申請人又はその代表者若しくは代理人は、法務省令で定める場合を除き、申請情報を記載した書面に記名押印しなければならない。
2 前項の場合において、申請情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書(住所地の市町村長(特別区の区長を含むものとし、地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、市長又は区長若しくは総合区長とする。次条第一項において同じ。)又は登記官が作成するものに限る。以下同じ。)を添付しなければならない。
3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。
4 官庁又は公署が登記の嘱託をする場合における嘱託情報を記載した書面については、第二項の規定は、適用しない。
5 第十二条第一項及び第十四条の規定は、法務省令で定めるところにより申請情報の全部を記録した磁気ディスクを提出する方法により登記を申請する場合について準用する。
第十八条 委任による代理人によって登記を申請する場合には、申請人又はその代表者は、法務省令で定める場合を除き、当該代理人の権限を証する情報を記載した書面に記名押印しなければならない。復代理人によって申請する場合における代理人についても、同様とする。
2 前項の場合において、代理人(復代理人を含む。)の権限を証する情報を記載した書面には、法務省令で定める場合を除き、同項の規定により記名押印した者(委任による代理人を除く。)の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
3 前項の印鑑に関する証明書は、作成後三月以内のものでなければならない。
4 第二項の規定は、官庁又は公署が登記の嘱託をする場合には、適用しない。
E課税価格
定率課税の場合には課税価格により登録免許税が変わるので課税価格の提供を要する。対して定額課税の場合には課税価格は問題とならない。
F登録免許税
申請する登記により登録免許税は異なる。
登記の目的(所有権移転登記)
所有権移転登記の目的 | 事例 |
---|---|
所有権移転 | 所有権の全てが移転した場合 |
所有権一部移転 | 所有権の一部が移転した |
所有権一部(順位◯番で登記した持分)移転 |
前所有者が数回に分けて所有権を取得している場合 |
◯持分全部移転 | 共有者の誰かの持分の全てが移転した場合 |
共有者全員持分全部移転 |
共有者全員の持分が全部移転した場合 |
◯持分一部移転 | 共有者の持分の一部が移転した場合 |
◯持分x分のy、△持分x分のy移転 | 複数の共有者の持分の一部が移転した場合 |
◯持分一部(順位番号◯番で登記した持分)移転 | 共有者が数回に分けて所有権を取得した持分の特定の持分を移転する場合 |
登記原因日付
登記原因である法律行為やその他の法律事実が発生した日又はその効力が生じた日。典型例として売買なら所有権の移転の時期に特約などがなければ売買契約成立の日が登記原因日付となる。
添付書類
登記原因証明情報
原則 | ・全ての登記の申請に必要 |
---|---|
例外 |
・所有権保存の登記(敷地権付区分建物に関する74条2号申請を除く) |
登記識別情報
原則 | 登記権利者と登記義務者が共同して権利に関する登記を申請する場合に必要になる |
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例外 | 単独申請の場合には登記識別情報は不要 代表的な例は相続による移転登記など |
登記識別情報の通知
・登記の申請者が登記名義人(所有権者になる場合や、抵当権者になる場合)になる場合に通知される。
・原則的には上記例の場合は通知されるが、「不通知の申出」をしていると通知されない。
登記識別情報の管理をしたくない者などは不通知の申出をすることもある。
※申請者が登記名義人になる場合に通知されるので、債権者代位により債権者が登記申請をした場合は通知されない。債権者が申請人となるが、登記名義人は債務者になるので要件を満たさないから。
印鑑証明
原則 | 所有権の登記名義人が登記義務者として登記申請をする場合に添付が必要(作成から3ヶ月以内のもの) |
---|---|
例外 |
・添付書類を電子書面で提供する場合には不要(印鑑証明の代わりとして電子署名が必要になる) |
・印鑑証明は市区町村作成の物が必要だが、登記義務者が法人の場合は登記所作成の物が必要になる。
印鑑証明の添付の意義
所有権の登記名義人が登記義務者になる場合に申請についての最終確認の意味がある
誰の印鑑証明が必要なのか
印鑑証明は司法書士に委任状を書くものの物が必要になると考えれば良い。
例
・未成年者が不動産を売却する場合、委任状を書くのは未成年者の法定代理人である親なので親の印鑑証明が必要になる
・成年被後見人が不動産を売却したなら成年後見人の物が必要
代理人の権限を証明する情報
申請代理人がいる場合には代理権限証明情報が必要になる
代表的な例は登記申請を代理する司法書士や未成年者を代理する親権者。
司法書士の代理権限証明は委任状であり、親が法定代理人であることを証明する情報としては戸籍謄本。
司法書士の代理権限証明に使う委任状への押印は登記義務者は実印の必要があり、権利者は認印でよい。
住所を証する情報
所有権に関する登記の登記名義人になる者の物が必要。
住所証明の意義
固定資産税の課税のため
※固定資産税が課税されない抵当権や地上権に関しては住所証明は不要。
登録免許税
所有権保存登記と所有権移転登記
所有権保存登記
課税標準:不動産の価格
税率:4/1000
所有権移転の登記
課税標準:不動産の価格
原因が相続、法人の合併、共有物分割、遺産分割、遺留分減殺=税率:4/1000
原因が上記以外=税率:20/1000
担保権の登記
設定登記
課税標準:債権額、極度額、不動産工事費用の予算額
税率:4/1000
移転登記
原因:相続、法人の合併
課税標準:債権額、極度額、不動産の費用の予算額
税率:1/1000
原因:代位弁済
課税標準:代位弁済額(代位弁済の額が抵当権の被担保債権を上回る場合は被担保債権の額)
税率:2/1000
原因:債権譲渡
課税標準:譲渡額
税率:2/1000
原因:根抵当権の全部譲渡
課税標準:極度額
税率:2/1000
原因:根抵当権の分割譲渡
課税標準:譲渡された根抵当権の極度額
税率:2/1000
原因:根抵当権の一部譲渡、または法人の分割による移転(譲受人が単独の場合)
課税標準:一部譲渡後の共有者の数で極度額を除した額
税率:2/1000
例:極度額2000万円の根抵当権をAから一部譲渡し、AB共有になった場合
2000万÷2×2/1000=2万円
原因:根抵当権の一部譲渡、または法人の分割による移転(譲受人が複数の場合)
課税標準:一部譲渡後の共有者の数で極度額を除した後、譲受人の数を乗じた額
税率:2/1000
例:極度額2000万円の根抵当権をAから一部譲渡し、ABCD共有になった場足
2000万÷4×3×2/1000=3万円
原因:根抵当権共有者の権利の移転
課税標準:権利譲渡前の共有者の数で極度額を除した額
税率:2/1000
順位の変更
課税標準:担保権の件数
税額:1件につき1000円
仮登記
@所有権移転の仮登記・所有権移転請求権の仮登記
原因:相続・法人の合併・共有物の分割
課税標準:不動産の価格
税率:2/1000
原因:上記以外
課税標準:不動産の価格
税率:10/1000
Aその他の仮登記(本登記の課税標準が不動産の価格であるもの)
税額:本登記の1/2
@A以外の仮登記
課税標準:不動産の個数
税額:不動産1個につき1000円
差押・仮差押・仮処分の登記
課税標準:債権額・極度額・不動産工事費用の予算額
税率:4/1000
信託の登記・相続財産分離の登記
所有権に関するもの
課税標準:不動産の価格
税率:4/1000
所有権以外に関するもの
課税標準:不動産の価格
税率:2/1000
付記登記・抹消登記・抹消回復登記・変更登記・更生登記
課税標準:不動産の価格
税額:不動産1個につき1000円
住宅用家屋の軽減税率
個人が、平成29年3月31日までの間に住宅用家屋を新築又は建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合の保存登記
税率:1.5/1000
個人が、平成29年3月31日までの間に住宅用家屋の取得(売買及び競落に限ります。)をし、自己の居住の用に供した場合の移転登記
税率:3/1000
個人が、平成29年3月31日までの間に住宅用家屋の新築(増築を含む。)又は住宅用家屋の取得をし、自己の居住の用に供した場合において、これらの住宅用家屋の新築若しくは取得をするための資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記
税率:1/1000