抵当権の処分【一部順位譲渡】 | 不動産登記申請メモ 不動産登記申請書式集
事例
Aが有する抵当権の一部(金1,000万円のうち金700万円)をAより後順位の抵当権者甲へ順位譲渡した場合の申請。
申請情報
登記の目的 |
◯番抵当権一部(金1,000万円のうち金700万円)の◯番抵当権への順位譲渡 |
---|---|
原因日付 |
年月日 抵当権一部順位譲渡 |
権利者 | 住所 甲 |
義務者 |
住所 A |
添付情報 |
・登記原因証明情報 |
登録免許税 |
金1000円 |
備考
登記の目的
【◯番抵当権一部(金1,000万円のうち金700万円分)の◯番抵当権への順位譲渡】
※◯番抵当権〜のように順位番号で特定する。
※一部順位譲渡なので抵当権の総額のうち譲渡する金額を提供する。
原因日付
【年月日 抵当権一部順位譲渡】
※抵当権の一部の順位譲渡の場合には原因は(抵当権一部順位譲渡)。抵当権の一部への順位譲渡の原因は(順位譲渡)となることの違いに注意。
参考抵当権の処分【一部への順位譲渡】
権利者
【住所 甲】
※抵当権の順位譲渡の登記権利者は順位譲渡により利益を受ける者。
義務者
【住所 A】
※抵当権の順位譲渡の登記義務者は順位譲渡により不利益を受ける者。
添付情報
・登記原因証明情報
・登記識別情報(Aのもの)
・代理権限証明情報(甲及びAからの委任状)
登録免許税
【金1000円】
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「抵当権の譲渡や放棄」と抵当権の「順位の譲渡や順位の放棄」の違い
抵当権の順位の譲渡や順位の放棄では、既に登記がされている抵当権者への順位の譲渡や放棄であり、その被担保債権の内容は既に登記されているため改めて被担保債権の内容を提供する必要はない。
抵当権の譲渡は無担保債権者への譲渡なので被担保債権の内容は登記されてなく、被担保債権の内容を提供する必要がある事との違いに注意する。
抵当権の処分
抵当権は特定の債権を担保する性質上、被担保債権と分離して処分することは本来なら出来ないはずだが、民法376条で定められている一定の場合に関しては被担保債権と分離して抵当権のみの処分が認められる。
民法376条で定められている一定の場合とは
・転抵当
・抵当権の譲渡
・抵当権の放棄
・抵当権の順位の譲渡
・抵当権の順位の放棄
上記のケースでは被担保債権と分離して抵当権のみの処分が可能になる。
民法
(抵当権の処分)
第三百七十六条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
(抵当権の処分の対抗要件)
第三百七十七条 前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。
転抵当
転抵当とは、自己が有する抵当権をもって他の債権の担保に充てる事。転抵当権者(転抵当の設定を受ける者)と原抵当権者(自己の抵当権を他の債権の担保に充てる者)の間の合意で成立する。原抵当権の一部にのみ転抵当を設定することも可能。転抵当の設定を受けた者(転抵当権者)は、その原抵当権の優先弁済権の範囲内で原抵当権者に優先して弁済を受けることができる。
債務者や物上保証人への対抗要件
転抵当の設定は、当事者間の合意で成立するが、債務者や物上保証人への対抗要件は原抵当権者からの債務者への通知または債務者の承諾のいずれかが必要になる。第三者への対抗要件は登記。
両債権の弁済期と抵当権の実行
原抵当権の被担保債権の弁済期より前に転抵当の被担保債権の弁済期が到来する場合でも転抵当の設定は可能だが、転抵当権者は原抵当と転抵当の両被担保債権の弁済期が到来しないと抵当権の実行は出来ない。抵当権の実行がされると転抵当権者は原抵当権に優先して配当を受け、それでも原抵当権の優先弁済枠に余剰があるなら原抵当権者が配当を受けることになる。
抵当権の譲渡と放棄
抵当権者は同一の債務者に債権を有する他の無担保債権者の為に抵当権の譲渡や放棄が出来る。
譲渡や放棄は抵当権の一部の放棄や譲渡も可能だし、譲渡や放棄を受ける者の債権の一部に対しての譲渡や放棄も可能。
譲渡を受けた者
抵当権の譲渡を受けた者は、譲渡者の抵当権の優先弁済権の範囲内で原抵当権者に優先して弁済を受けることが出来る。
放棄を受けたもの
抵当権の放棄を受けた者は、放棄者の抵当権の優先弁済権の範囲内で放棄者と同順位で優先弁済を受けることが出来る。
放棄を受けた者は同順位で優先弁済を受けるので、各々の債権額の割合で優先弁済を受けることになる。
抵当権の順位の譲渡や順位の放棄
抵当権者は同一の不動産を目的とした後順位(順位の譲渡は同順位でも可能)の担保権者に対して自己の抵当権の順位の譲渡や放棄が出来る。後順位の抵当権者とは、別個の抵当権のことであり、名義人が同一か異なるかは問わないので、1番抵当権と2番抵当権の登記名義が同一人であっても順位の譲渡が出来る。
抵当権の順位の譲渡や順位の放棄では、受益者(譲渡や放棄を受ける者)が後順位の担保権者である点が抵当権の譲渡や放棄とは異なる(抵当権の譲渡や放棄の受益者は無担保債権者)。
自己の抵当権の一部について順位の譲渡や放棄が可能だし、抵当権を準共有しているなら自己の持分のみの順位の譲渡や放棄も可能。
同順位間での順位の譲渡と順位の放棄
抵当権の順位の譲渡は同順位間でも可能。
同順位間での順位の譲渡の例
Aの債権額金1,000万円を被担保債権とした抵当権と、Bの債権額金500万円を被担保債権とした抵当権が同順位で存在する場合に、抵当権の実行をして配当金が総額1200万円であった場合にはAとBの債権額の割合(A2・B1)により、A800万円・B400万円の配当を受けることになる。
この事例でAがBに抵当権の順位の譲渡をした場合には、BはAに優先して自己の債権額の全額(500万円)の弁済を受け、残余700万円の配当をAが受けることになる。
対して抵当権の順位の放棄の効果は放棄を受けたものが放棄をした者と同順位で優先弁済を受ける事が出来るものなので、同順位間で順位の放棄をしても意味が無いので認められない。
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