根抵当権の処分【転抵当】 | 不動産登記申請メモ 不動産登記申請書式集

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根抵当権の処分【転抵当】 | 不動産登記申請メモ 不動産登記申請書式集

事例

甲がAに対して有する債権の担保のために、Aが有する根抵当権に転抵当を設定する合意が成立した場合の申請。

 

甲のAに対する債権の内容は以下の通り。
・平成25年5月5日金銭消費貸借
・債権額金1,000万円
・年5%(365日日割計算)
・年10%(365日日割計算)

 

申請情報

登記の目的

 ◯番根抵当権転抵当

原因日付

年月日 金銭消費貸借
年月日 設定

債権額 金1,000万円
利息 年5%(365日日割計算)
損害金 年10%(365日日割計算)
債務者 住所 A
権利者 住所 甲

義務者

住所 A

添付情報

・登記原因証明情報
・登記識別情報(Aのもの)
・代理権限証明情報(甲及びAからの委任状)

登録免許税

金1000円
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備考

登記の目的

【◯番根抵当権転抵当】
※◯番根抵当権〜のように順位番号で特定する。

 

原因日付

【年月日 金銭消費貸借
 年月日 設定】
※転抵当権者甲の被担保債権の原因日付と、転抵当権設定の原因日付を提供する。

 

債権額

【金1,000万円】
※転抵当権者甲の被担保債権の内容を提供する。

利息

【年5%(365日日割計算)】
※転抵当権者甲の被担保債権の内容を提供する。

 

損害金

【年10%(365日日割計算)】
※転抵当権者甲の被担保債権の内容を提供する。

 

債務者

【住所 A】
※転抵当権者甲の被担保債権の内容を提供する。

 

権利者

【住所 甲】

 

義務者

【住所 A】

 

添付情報

・登記原因証明情報
・登記識別情報(Aのもの)
・代理権限証明情報(甲及びAからの委任状)

 

登録免許税

【金1000円】

 

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根抵当権の処分

(抵当権の処分)
第三百七十六条 抵当権者は、その抵当権を他の債権の担保とし、又は同一の債務者に対する他の債権者の利益のためにその抵当権若しくはその順位を譲渡し、若しくは放棄することができる。
2 前項の場合において、抵当権者が数人のためにその抵当権の処分をしたときは、その処分の利益を受ける者の権利の順位は、抵当権の登記にした付記の前後による。
(抵当権の処分の対抗要件)
第三百七十七条 前条の場合には、第四百六十七条の規定に従い、主たる債務者に抵当権の処分を通知し、又は主たる債務者がこれを承諾しなければ、これをもって主たる債務者、保証人、抵当権設定者及びこれらの者の承継人に対抗することができない。
2 主たる債務者が前項の規定により通知を受け、又は承諾をしたときは、抵当権の処分の利益を受ける者の承諾を得ないでした弁済は、その受益者に対抗することができない。

(根抵当権の処分)

第三百九十八条の十一 元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない。ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない

(根抵当権の譲渡)

第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
(根抵当権の一部譲渡)
第三百九十八条の十三 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

民法398条の11により、元本確定前の根抵当権は民法376条の処分は認められない(転抵当は認められる)。
これは元本確定前の根抵当権を無担保債権者に譲渡や放棄したり、後順位担保権者に順位の譲渡や放棄をすることは認められないということで、転抵当は認められる。元本確定後の根抵当権は通常の抵当権同様に処分が可能になる。

 

 元本確定前の根抵当権の処分をすることは認められないが、処分の利益を受けることは認められるので、先順位抵当権者から後順位根抵当権者へ順位の譲渡や放棄をすることは可能。

 

 民法376条の処分は出来ないが、根抵当権の全部譲渡、分割譲渡、一部譲渡は可能(民法398条の12、13)。

 

民法376条の処分(転抵当・譲渡・放棄・順位譲渡・順位放棄)と民法398条の12・13条の譲渡の違い

 民法376条の処分では、(根)抵当権者に変化はない。譲受人は譲渡人に優先して弁済を受けることができたり、放棄を受けたものは債権額に応じて放棄者と優先弁済を按分比例して受けることができる。
 対して民法398条の12・13の全部譲渡や分割譲渡、一部譲渡を受けたものはその者が根抵当権者となるのであり、譲渡人は根抵当権者ではなくなる事になる(分割譲渡では分割して譲渡した分は譲受人が根抵当権者になり、一部譲渡では譲渡人と譲受人が根抵当権を準共有する)。元本確定前の根抵当権は民法376条の処分(転抵当は除く)は認められず、民法398条の12・13条の譲渡は認められる。

 

 

転抵当※元本確定前の根抵当権にも認められる

転抵当とは、自己が有する抵当権をもって他の債権の担保に充てる事。転抵当権者(転抵当の設定を受ける者)と原抵当権者(自己の抵当権を他の債権の担保に充てる者)の間の合意で成立する。原抵当権の一部にのみ転抵当を設定することも可能。転抵当の設定を受けた者(転抵当権者)は、その原抵当権の優先弁済権の範囲内で原抵当権者に優先して弁済を受けることができる

 

債務者や物上保証人への対抗要件

転抵当の設定は、当事者間の合意で成立するが、債務者や物上保証人への対抗要件は原抵当権者からの債務者への通知または債務者の承諾のいずれかが必要になる。第三者への対抗要件は登記

 

両債権の弁済期と抵当権の実行

原抵当権の被担保債権の弁済期より前に転抵当の被担保債権の弁済期が到来する場合でも転抵当の設定は可能だが、転抵当権者は原抵当と転抵当の両被担保債権の弁済期が到来しないと抵当権の実行は出来ない。抵当権の実行がされると転抵当権者は原抵当権に優先して配当を受け、それでも原抵当権の優先弁済枠に余剰があるなら原抵当権者が配当を受けることになる。

 

抵当権の譲渡と放棄※元本確定前の根抵当権には認められない。

抵当権者は同一の債務者に債権を有する他の無担保債権者の為に抵当権の譲渡や放棄が出来る
譲渡や放棄は抵当権の一部の放棄や譲渡も可能だし、譲渡や放棄を受ける者の債権の一部に対しての譲渡や放棄も可能。

 

譲渡を受けた者

抵当権の譲渡を受けた者は、譲渡者の抵当権の優先弁済権の範囲内で原抵当権者に優先して弁済を受けることが出来る。

 

放棄を受けたもの

抵当権の放棄を受けた者は、放棄者の抵当権の優先弁済権の範囲内で放棄者と同順位で優先弁済を受けることが出来る。
放棄を受けた者は同順位で優先弁済を受けるので、各々の債権額の割合で優先弁済を受けることになる。

 

抵当権の順位の譲渡や順位の放棄※元本確定前の根抵当権には認められない。

抵当権者は同一の不動産を目的とした後順位(順位の譲渡は同順位でも可能)の担保権者に対して自己の抵当権の順位の譲渡や放棄が出来る。後順位の抵当権者とは、別個の抵当権のことであり、名義人が同一か異なるかは問わないので、1番抵当権と2番抵当権の登記名義が同一人であっても順位の譲渡が出来る
抵当権の順位の譲渡や順位の放棄では、受益者(譲渡や放棄を受ける者)が後順位の担保権者である点が抵当権の譲渡や放棄とは異なる(抵当権の譲渡や放棄の受益者は無担保債権者)。
自己の抵当権の一部について順位の譲渡や放棄が可能だし、抵当権を準共有しているなら自己の持分のみの順位の譲渡や放棄も可能。

 

同順位間での順位の譲渡と順位の放棄

抵当権の順位の譲渡は同順位間でも可能。

同順位間での順位の譲渡の例
Aの債権額金1,000万円を被担保債権とした抵当権と、Bの債権額金500万円を被担保債権とした抵当権が同順位で存在する場合に、抵当権の実行をして配当金が総額1200万円であった場合にはAとBの債権額の割合(A2・B1)により、A800万円・B400万円の配当を受けることになる。
この事例でAがBに抵当権の順位の譲渡をした場合には、BはAに優先して自己の債権額の全額(500万円)の弁済を受け、残余700万円の配当をAが受けることになる。

対して抵当権の順位の放棄の効果は放棄を受けたものが放棄をした者と同順位で優先弁済を受ける事が出来るものなので、同順位間で順位の放棄をしても意味が無いので認められない

 

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