(根)抵当権
(根)抵当権の設定
(根)抵当権の変更
(根)抵当権の順位の変更に関する登記
(根)抵当権の更正
(根)抵当権の移転・譲渡
(根)抵当権の処分
(根)抵当権その他の登記
根抵当権の元本確定
(根)抵当権の抹消
抵当権(民法369条〜398条)と根抵当権(民法398条の2〜398条の22)
抵当権
抵当権とは(民法369条T)
特定の債権の担保のために債務者または第三者(物上保証人という)が担保に提供した不動産に設定することで債務が弁済されなかった場合にその不動産を売却(抵当権の実行)するなどし、その代金から優先的に弁済を受けることができる担保物権。抵当権を設定しても債務者または第三者は当該不動産の占有を継続し使用収益をすることが出来る。
抵当権の目的 (民法369条U)
不動産だけではなく、地上権、永小作権も抵当権の目的とすることが出来る。その他、立木法による立木や、財団抵当法による財団も抵当権の目的となり得る。
抵当権の設定の可否
・一筆の土地の一部を目的とした抵当権の設定は可能だが、登記はできない(抵当権の範囲の特定が困難になるため)。一筆の土地の一部のある部分に抵当権を設定し登記したいのなら、前提として分筆登記をして分泌後の土地全体を目的とし登記する方法がある。
・共有者の共有持分のみを目的とした抵当権の設定登記は可能。
・所有権の一部を目的とした抵当権の設定はできないが、何度かにわけて所有権を取得し、結果的に単独所有となった場合には(順位番号◯番で取得した持ち分)などと特定することが可能なので設定登記が可能になる。参考順位番号◯番で登記した持分の移転
抵当権の効力の及ぶ範囲(民法370条)
・抵当権は低当地の上に存する建物を除きその目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶ。ただし、設定行為に別段の定めがある場合及び第四百二十四条の規定により債権者が債務者の行為を取り消すことができる場合は、この限りでない。
抵当権の被担保債権
・現に生じている特定の債権はもちろんだが、将来発生する債権や金銭債権以外の債権(物の引き渡し債権等)でも最終的に金銭債権へと変わる債権(債務不履行による損害賠償請求権等)なら設定できる。
・一個の債権の一部や、数個の債権をまとめて設定することも可能
※債権者が同一であれば債務者は異なっていても可能。
抵当権の対抗要件
・抵当権は登記しなければ第三者に対抗できない。
抵当権の順位(民法373条)
・抵当権の順位は登記の前後による。
抵当権の順位の変更(民法374条)
・各抵当権者の合意と、利害関係人がいる場合にはその者の承諾を得て登記することにより抵当権の順位の変更の効力が生じる※登記が効力要件
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共同抵当
共同抵当とは
・同一の債権の担保として数個の不動産を目的として設定される抵当権。
1つの申請情報でする登記
関連条文
【不動産登記令】
第四条 申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。
【不動産登記規則35条十】
(一の申請情報によって申請することができる場合)
第三十五条 令第四条ただし書の法務省令で定めるときは、次に掲げるときとする。
十 同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。
共同抵当の追加
・ある債権の担保のために抵当権が設定登記された後にその被担保債権を担保するために他の不動産に抵当権を設定し共同抵当とすることも可能。
※共同抵当の追加の登記では、通常の抵当権の申請情報の他に既に登記された抵当権にかんする表示を提供し、共同抵当となることを明確にする。
共同抵当権設定の登録免許税
債権額の1000分の4だが、既に同一の債権を担保する抵当権の登記をしていることを証する財務省令で定める書面(既に抵当権の登記がされている不動産の登記事項証明書)を提供すれば不動産1個につき1500円となる。
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抵当権設定の登記事項
権利に関する登記の通則(不動産登記法59条)
@登記の目的(不動産登記法59条)
A登記原因及びその日付(不動産登記法59条)
B登記権利者(抵当権者)の氏名または名称及び住所(不動産登記法59条)
担保権の登記の登記事項であり、抵当権設定登記の絶対的登記事項(不動産登記法83条)
C債権額(一定の金額を目的としない債権については、その価額)(不動産登記法83条)
D債務者の氏名又は名称及び住所(不動産登記法83条)
抵当権設定の任意的登記事項
E利息に関する定めがあるときは、その定め(不動産登記法88条)
※利息は無しという無利息の定めをした場合には無利息の定めを申請情報の内容としなければならない。
F債権に付した条件があるときは、その条件(不動産登記法88条)
G民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め(抵当権の効力の及ぶ範囲)(不動産登記法88条)
H民法第三百七十五条第二項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定め(不動産登記法88条)
※賠償額の定めと違約金は異なり、違約金の定めは抵当権の登記事項ではないので違約金の定めを申請情報の内容とした申請は却下される
I抵当証券発行の定めがあるときは、その定め(不動産登記法88条)
J前号の定めがある場合において元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定め(不動産登記法88条)
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根抵当権(民法398条の2〜22)
根抵当権とは
債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの、その他債務者との一定の種類の取引によって生ずる債権を極度額を限度に担保する抵当権。
通常の抵当権が原則として既に発生している特定の債権を担保するのと違い、根抵当権は特定の債権を担保しているわけではないので元本確定前の根抵当権では付従性と随伴性が否定されている。元本確定後の根抵当権は通常の抵当権と同じように扱われるので附従性と随伴性が発生する。
一定の範囲に属する債権とは、根抵当権者が債務者に対して有する債権全てを指すものではない。
根抵当権の準共有(民法398条の14)
根抵当権は数人で準共有することが出来る(準共有とは所有権以外の財産権を数人が共有すること)
根抵当権の準共有者は各々の債権額に応じて弁済を受ける事が出来るが、元本確定前の根抵当権は債権額が確定していないため、元本確定の後に割合が決定することになる。
第三百九十八条の十四 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる
根抵当権の対抗要件
根抵当権は設定の登記をすることにより第三者へ対抗することが出来る。
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共同根抵当権と累積根抵当権(民法398条の16・18)
普通の抵当権では同一の債権を被担保債権として複数の不動産を目的として抵当権を設定すると当然に共同担保関係になるが、根抵当権の場合は当然に共同根抵当権になる訳ではない。
共同根抵当権(民法398条の16)
・極度額の一致
・債権の範囲の一致
・債務者の一致
・根抵当権の設定登記(共同根抵当権追加の場合には追加設定の登記)と同時に共同担保の旨の登記をする
上記の全てを満たす事により共同根抵当権が成立する。
※上記の条件を満たしていればいいので、確定期日等は異なっていても良い。
・2個の土地に極度額1,000万円の共同根抵当権を設定すると2個の土地から合計で1000万円の優先弁済を受けることになる。
※2000万円になるわけではないことに注意。
共同根抵当の変更と元本の確定
共同根抵当の変更は共同根抵当となっている全ての不動産について登記をしなければ効力を生じない。
共同根抵当権では1個の不動産についてのみ元本確定事由が生じた場合でも元本が確定する。
第三百九十八条の十七 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない。
2 前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する。
累積根抵当権(民法398条の18)
数個の不動産につき根抵当権を有する者は民法398条の16(共同根抵当権)の場合を除き各極度額に至るまで優先権を行使することが出来る。
※各極度額なので1000万円を極度額とした根抵当権を2個の不動産に設定している場合には2,000万円までの優先弁済権を行使できることになる(共同根抵当権との違いに注意)
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根抵当権の元本確定事由
根抵当権が設定された後に一定の事由が生じると根抵当権によって担保される債権が確定する。
条文 | 詳細 | 備考 | 元本確定の時期 |
民法398条6 | 元本確定期日を定めている場合には期日の到来 | 確定期日は確定期日を定めた日から5年以内でなければならない。 | 確定期日 |
民法398条8-4 | 根抵当権者又は債務者の相続開始後6ヶ月以内に指定根抵当権の合意又は指定債務者の同意をしない時 | 相続開始の時 | |
民法398条9-4 | 根抵当権者又は債務者に合併があった場合に、根抵当権設定者が確定請求をした時 | 根抵当権設定者が合併の事実を知った日から2週間以内。民法398条9-5 | 合併の時 |
民法398条9-4 |
根抵当権又は債務者を分割会社とする会社分割があった場合に、根抵当権設定者が確定請求をした時 | 分割の時 | |
民法398条17 | 共同根抵当権の1個の不動産についてのみ元本確定事由が生じた場合 | 他の不動産について確定事由が生じていなくても元本が確定する | |
民法398条19 | 根抵当権設定のときから3年を経過した後に、根抵当権設定者が確定請求をした時 | ※債務者からの請求ではなく根抵当権設定者からの請求※元本確定期日が定められている場合には認められない | 請求から2週間を経過した時 |
民法398条19-1 | 根抵当権者が確定請求をした時 | ※債務者からの請求ではなく根抵当権設定者からの請求※元本確定期日が定められている場合には認められない | 請求の時 |
民法398条20-1 | 根抵当権者自身が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行又は物上代位のための差し押さえの申立をした時 | 確定後に申立を取り下げても元本確定の効果は失われない | 申立をした時※競売手続き開始決定の時ではない |
民法398条20-1-1 | 根抵当権者自身が抵当不動産に対して滞納処分による差し押さえをした時 | 差し押さえがされた時 | |
民法398条20-1-3 |
第三者の申立により、抵当不動産の競売手続きの開始又は滞納処分による差し押さえがあった時 | 2週間経過後に競売手続きの開始や差押の効力が消滅した場合には元本は確定しなかったものとみなされる | 根抵当権が当該事実を知ったときから2週間を経過した時 |
民法398条20-1-4 | 債務者又は根抵当権が破産手続開始の決定を受けた時 | 破産手続き開始の決定の効力が消滅した時は元本は確定しなかったものとみなされる | 破産手続開始の決定がされた時 |
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根抵当権の変更(民法398条の4〜6)
根抵当権は、元本確定の前後を問わず極度額の変更ができ、元本の確定前なら債権の範囲と債務者、元本確定期日の定めが変更できる。
極度額の変更(民法398条の5)
元本確定の前後を問わず極度額の変更ができ、この変更をするには利害関係人の承諾が必要となる。
利害関係人はその変更をすることにより損害を被る者なので極度額増額か減額かどちらの変更なのかで利害関係人は異なる。
第三百九十八条の五 根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない。
債権の範囲と債務者の変更(民法398条の4)
元本確定前の根抵当権は債権の範囲と債務者の変更が出来る。
この変更は元本確定の前に限られ、後順位抵当権者や第三者の承諾は不要で元本確定の前に変更の登記をしなかった時は変更をしなかったものとみなされる。
債務者の変更の登記は根抵当権者と根抵当権設定者との間の契約によるものなので債務者は変更契約の当事者ではないので債務者の承諾も必要ない。
第三百九十八条の四 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする。
2 前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない。
3 第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす
元本確定期日の変更(民法398条の6)
元本確定前の根抵当権は確定期日の定めの変更が出き、元本確定期日がない場合には新たに確定期日の定めをすることが出来る。この変更には後順位抵当権者や第三者の承諾は不要であるが、変更後の確定期日は変更の日から5年位内を期日とする必要があり、変更の登記をしなければ変更前の確定期日に元本が確定する。
第三百九十八条の六 根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる。
2 第三百九十八条の四第二項の規定は、前項の場合について準用する。
3 第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない。
4 第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する。
根抵当権の移転(民法398条の12〜14)
根抵当権は元本確定の前に限り譲渡し移転することが出来る。元本が確定すると根抵当権が担保する債権が確定し、随伴性と付従性の発生により根抵当権のみを譲渡し移転することができなくなる。
全部譲渡
根抵当権者は元本の確定の前に根抵当権設定者の承諾を得て根抵当権を譲り渡すことが出来る。
分割譲渡
根抵当権者は元本の確定の前に根抵当権設定者と当該根抵当権を目的とする権利を有する者(転抵当権者等)の承諾を得て当該根抵当権を2個に分割してその一方を譲渡することが出来る。
※分割して譲渡をすると移転した部分につき転抵当権者の権利が消滅してしまうので承諾が必要。
一部譲渡
根抵当権者は元本の確定の前に根抵当権設定者の承諾を得て当該根抵当権の一部を譲渡することが出来る。
※分割譲渡とは異なり転抵当権者の権利は消滅しないので転抵当権者等の承諾は不要。
根抵当権の共有者の権利譲渡
根抵当権の共有者は他の共有者の同意を得て元本の確定前に根抵当権設定者の承諾を得てその権利を譲渡出来る。
※根抵当権の共有者の権利譲渡は全部譲渡のみが可能で、分割譲渡や一部譲渡は法律関係が複雑になるので認められない。
事例 | 承諾や同意を得るべき相手 |
全部譲渡 | 根抵当権設定者の承諾 |
分割譲渡 |
根抵当権設定者の承諾 |
一部譲渡 |
根抵当権設定者の承諾 |
共有者の権利譲渡 |
根抵当権設定者の承諾 |
第三百九十八条の十二 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。
2 根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する。
3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。
(根抵当権の一部譲渡)
第三百九十八条の十三 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。
(根抵当権の共有)
第三百九十八条の十四 根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける。ただし、元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う。
2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。
根抵当権設定の登記事項
権利に関する登記の通則(不動産登記法59条)
@登記の目的(不動産登記法59条)
A登記原因及びその日付(不動産登記法59条)
B登記権利者(抵当権者)の氏名または名称及び住所(不動産登記法59条)
担保権の登記の登記事項であり、根抵当権設定登記の絶対的登記事項(不動産登記法83条)
C債務者の氏名又は名称及び住所(不動産登記法83条)
D債権の範囲及び極度額(不動産登記法88条2項)
根抵当権設定の任意的登記事項
E民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め(抵当権の効力の及ぶ範囲)(不動産登記法88条)
F担保すべき元本の確定期日があるときはその定め(不動産登記法88条2項)
※利息や損害金の定めを提供することはできない(極度額を超過しなければ元本・利息・損害金の全てが担保されるので登記する必要がない)点に注意。
(根)抵当権設定の課税価格と登録免許税
課税価格=債権額(根抵当権の場合は極度額)
税率=1000分の4
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関連条文
不動産登記法
第三節 権利に関する登記
第一款 通則
(権利に関する登記の登記事項)
第五十九条 権利に関する登記の登記事項は、次のとおりとする。
一 登記の目的
二 申請の受付の年月日及び受付番号
三 登記原因及びその日付
四 登記に係る権利の権利者の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該権利の登記名義人ごとの持分
五 登記の目的である権利の消滅に関する定めがあるときは、その定め
六 共有物分割禁止の定め(共有物若しくは所有権以外の財産権について民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百五十六条第一項ただし書(同法第二百六十四条において準用する場合を含む。)の規定により分割をしない旨の契約をした場合若しくは同法第九百八条の規定により被相続人が遺言で共有物若しくは所有権以外の財産権について分割を禁止した場合における共有物若しくは所有権以外の財産権の分割を禁止する定め又は同法第九百七条第三項の規定により家庭裁判所が遺産である共有物若しくは所有権以外の財産権についてした分割を禁止する審判をいう。第六十五条において同じ。)があるときは、その定め
七 民法第四百二十三条その他の法令の規定により他人に代わって登記を申請した者(以下「代位者」という。)があるときは、当該代位者の氏名又は名称及び住所並びに代位原因
八 第二号に掲げるもののほか、権利の順位を明らかにするために必要な事項として法務省令で定めるもの
(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
(登記原因証明情報の提供)
第六十一条 権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない。
(一般承継人による申請)
第六十二条 登記権利者、登記義務者又は登記名義人が権利に関する登記の申請人となることができる場合において、当該登記権利者、登記義務者又は登記名義人について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人は、当該権利に関する登記を申請することができる。
(判決による登記等)
第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
(登記名義人の氏名等の変更の登記又は更正の登記等)
第六十四条 登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、登記名義人が単独で申請することができる。
2 抵当証券が発行されている場合における債務者の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記は、債務者が単独で申請することができる。
第四款 担保権等に関する登記
(担保権の登記の登記事項)
第八十三条 先取特権、質権若しくは転質又は抵当権の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 債権額(一定の金額を目的としない債権については、その価額)
二 債務者の氏名又は名称及び住所
三 所有権以外の権利を目的とするときは、その目的となる権利
四 二以上の不動産に関する権利を目的とするときは、当該二以上の不動産及び当該権利
五 外国通貨で第一号の債権額を指定した債権を担保する質権若しくは転質又は抵当権の登記にあっては、本邦通貨で表示した担保限度額
2 登記官は、前項第四号に掲げる事項を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、共同担保目録を作成することができる。
(債権の一部譲渡による担保権の移転の登記等の登記事項)
第八十四条 債権の一部について譲渡又は代位弁済がされた場合における先取特権、質権若しくは転質又は抵当権の移転の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、当該譲渡又は代位弁済の目的である債権の額とする。
(抵当権の登記の登記事項)
第八十八条 抵当権(根抵当権(民法第三百九十八条の二第一項の規定による抵当権をいう。以下同じ。)を除く。)の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 利息に関する定めがあるときは、その定め
二 民法第三百七十五条第二項に規定する損害の賠償額の定めがあるときは、その定め
三 債権に付した条件があるときは、その条件
四 民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
五 抵当証券発行の定めがあるときは、その定め
六 前号の定めがある場合において元本又は利息の弁済期又は支払場所の定めがあるときは、その定め
2 根抵当権の登記の登記事項は、第五十九条各号及び第八十三条第一項各号(第一号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 担保すべき債権の範囲及び極度額
二 民法第三百七十条ただし書の別段の定めがあるときは、その定め
三 担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、その定め
四 民法第三百九十八条の十四第一項ただし書の定めがあるときは、その定め
(抵当権の順位の変更の登記等)
第八十九条 抵当権の順位の変更の登記の申請は、順位を変更する当該抵当権の登記名義人が共同してしなければならない。
2 前項の規定は、民法第三百九十八条の十四第一項ただし書の定めがある場合の当該定めの登記の申請について準用する。
(抵当権の処分の登記)
第九十条 第八十三条及び第八十八条の規定は、民法第三百七十六条第一項の規定により抵当権を他の債権のための担保とし、又は抵当権を譲渡し、若しくは放棄する場合の登記について準用する。
(共同抵当の代位の登記)
第九十一条 民法第三百九十三条の規定による代位の登記の登記事項は、第五十九条各号に掲げるもののほか、先順位の抵当権者が弁済を受けた不動産に関する権利、当該不動産の代価及び当該弁済を受けた額とする。
2 第八十三条及び第八十八条の規定は、前項の登記について準用する。
(根抵当権当事者の相続に関する合意の登記の制限)
第九十二条 民法第三百九十八条の八第一項又は第二項の合意の登記は、当該相続による根抵当権の移転又は債務者の変更の登記をした後でなければ、することができない。
(根抵当権の元本の確定の登記)
第九十三条 民法第三百九十八条の十九第二項又は第三百九十八条の二十第一項第三号若しくは第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合の登記は、第六十条の規定にかかわらず、当該根抵当権の登記名義人が単独で申請することができる。ただし、同項第三号又は第四号の規定により根抵当権の担保すべき元本が確定した場合における申請は、当該根抵当権又はこれを目的とする権利の取得の登記の申請と併せてしなければならない。
(抵当証券に関する登記)
第九十四条 登記官は、抵当証券を交付したときは、職権で、抵当証券交付の登記をしなければならない。
2 抵当証券法第一条第二項の申請があった場合において、同法第五条第二項の嘱託を受けた登記所の登記官が抵当証券を作成したときは、当該登記官は、職権で、抵当証券作成の登記をしなければならない。
3 前項の場合において、同項の申請を受けた登記所の登記官は、抵当証券を交付したときは抵当証券交付の登記を、同項の申請を却下したときは抵当証券作成の登記の抹消を同項の登記所に嘱託しなければならない。
4 第二項の規定による抵当証券作成の登記をした不動産について、前項の規定による嘱託により抵当証券交付の登記をたときは、当該抵当証券交付の登記は、当該抵当証券作成の登記をした時にさかのぼってその効力を生ずる
民法(抵当権)
民法(根抵当権)
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